うなぎ犬走る

シェパードの尻尾はうなぎに似ている

『南極越冬隊タロジロの真実』 北村泰一

2008.07.28

category : 書籍

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南極越冬隊タロジロの真実 (小学館文庫 R き- 13-1)南極越冬隊タロジロの真実 (小学館文庫 R き- 13-1)
(2007/02)
北村 泰一

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著者は南極第一次越冬隊に犬係として参加し、
のちに南極で生き残ったタロとジロに再開した、
一次隊メンバー唯一の人物。

南極大陸に置き去りにされた犬たちについて書かれた本は数多い。
多くはプロの物書きによるもので、確かに上手に書かれてはいるけれど、
犬達に対する思いが伝わってくるインパクトが、
当事者である北村氏が書いたこの本とは比べ物にならない。

越冬隊員が南極でどんな生活をして、どんな仕事や冒険をしていたのか、
船から基地まで、どれだけの苦労をして隊員を送り届けたのか、
1年間の南極での様子がよくわかる。
その中で、犬達がどんな活躍をして、
隊員達の手助けをしていたのかもよくわかる。
越冬隊引き上げの際、
最後まで犬達を助けようと懸命に努力した様子も伝わってくる。

獰猛で喧嘩っ早く、
力を使ってコントロールするように指示されていた樺太犬たちが、
どれだけ繊細な心を持っているかということに、
著者が気づかされていく様子も、よく描写されている。

タロジロとの再開シーンは、
映画「南極物語」のように互いに走り寄って感動の抱擁・・・という風ではなく、
人間も犬も1歩引いたかたちで地味なものだけれど、
それがまたリアルで、静かな感動となって胸に残る。

鎖に繋がれたまま息絶えた7頭の犬達を、
著者が海に葬るラストが、あまりにも強い余韻となって、
いつまでも読み手の心から消えることがない。

『首輪をつけた捜査官』 『匂いの捜査官』 竹本昌生

2008.07.01

category : 書籍

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P1010349.jpg

移行臭による臭気選別の開発者である、大御所訓練士の本を合わせて2冊。



首輪をつけた捜査官首輪をつけた捜査官
(1994/07)
竹本 昌生

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学術的な意味でのイヌの鼻の仕組みから、警察犬制度の説明など。
警察犬の訓練内容、特に臭気選別についての解説と、
実際の訓練方法について。
実際に事件に出動した際の、選別結果についての報告もあり。
著者が若かりしころの、訓練犬とのエピソードが面白かった。

著者の犬に向き合う真摯な姿勢や、
実働の警察犬を訓練する信念・誇りが強く感じられた。

臭気選別に興味がない人でも、犬と訓練をしている人なら、
1度は読んでおいて損はないと思う。
犬を訓練するにあたって、どんな気持ちで望み、
どんな態度で犬に接するべきなのか。
犬を訓練する人間は、常にどういう心持ちであるべきか、
時に耳が痛くなることが書いてある。
定期的に読み返す必要を感じた良本。



匂いの捜査官匂いの捜査官
(2005/12)
竹本 昌生

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こちらは前作よりも、内容に資料的な色合いが濃くなっている。
著者が初めて証人として公判出廷した事件について、
大きく取り上げられている。

臭気選別の結果を、実際に裁判の証拠として検証するにあたって、
実施する側の沢山の人間の不手際や、
警察犬に対する理解・知識の無さにより、
どんな苦労があるか、
また、どんな風に裁判で争われるかなどが、
詳しく書かれていて勉強になった。

臭気選別と一口に言っても、
血液の臭いや尿の臭いは個別のものとして識別できるか、
どれくらい古い臭いでも識別できるか、等々、
誰もやったことのない検証を、
次々と開発・研究・実践する著者の探求心と努力が伺われる。

決して恵まれた環境とは言えないだろう条件の中でも、
正確な仕事を完遂する、完成された選別犬の能力と、
訓練士の手腕に脱帽。

『ベルカ、吠えないのか? 』 古川日出男

2008.06.29

category : 書籍

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ベルカ、吠えないのか? (文春文庫 ふ 25-2)ベルカ、吠えないのか? (文春文庫 ふ 25-2)
(2008/05/09)
古川 日出男

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文庫本が出るのを待って買ってみた。
エンターテイメント系の本はまず読まないのと、
フィクションということであまり期待していなかったけれど、
結構面白かった。
独特の癖とテンポのある文体が、時にお下品だけれど、
面白みがあって読みやすい。

太平洋戦争時、日本軍が置き去りにした
4頭の軍用犬から始まった、48年の戦争の物語。
米軍に捕まったシェパードと北海道犬が、交配を繰り返し、
時に極北の橇犬に発展し、狼やライカ犬や色んな犬種と混じり合い、
アメリカ・ソ連・中国の軍用犬として、世界各地へ広がっていく。
人間に翻弄されながらも、
力強く歴史を駆け抜けていく犬たちは格好良いのだけれど、
1頭1頭に読者を感情移入させる暇は与えず、
流れるように物語は進んでいく。

世界史に疎いので、
20世紀東西冷戦の狭間で、どのような出来事があって歴史が動き、
どんな戦争が起こったか、世界情勢について少し勉強になった。

ラストがもうちょっと、アッというようなインパクトがあるとよかった。

『海辺の王国』 ロバート・ウェストール

2008.05.28

category : 書籍

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P1010547.jpg

海辺の王国海辺の王国
(1994/06)
ロバート ウェストール

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イギリスの児童文学。

第二次大戦中、空襲で家族を失った少年ハリーは、
おばの家に預けられることを嫌い、自由を求め、
同じ境遇で家族を失ったシェパードのドンと共に、
放浪の旅を続ける。

親切な人々と意地悪な人々との、出逢いと別れを繰り返し、
生き抜く智恵をつけながら、
自分の心の王国を目指し旅を続けていく。
13歳という年齢だからこそできる冒険の旅。

ようやく安住の地を見つけたかのように思えた矢先、
意外などんでん返しでラストを迎える。
著者の意図や、伝えたいことが何かはよくわかるものの、
ラストのあっけなさには結構ショックが残る。

登場する人間1人1人の描写が秀逸。

前評判の良さに、期待しすぎたという思いもなきにしもあらず。
90年に発表された作品なので無理な話だけれど、
大人ではなく、子供のうちに読んでけば、
感じるものももっと大きかっただろうと思う。

『エアデールテリア物語』 遠藤貴壽

2008.05.26

category : 書籍

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エアデールテリア物語―人にいちばん近い犬エアデールテリア物語―人にいちばん近い犬
(2006/02)
増田 勝正、遠藤 貴壽 他

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警察犬協会やIPOの大会、
ほか多方面にて活躍中のドイツ訓練系エアデールを紹介した本。
万能犬エアデールの復活を夢見て、ドイツから犬を輸入し、
日本に紹介する糸口を作った獣医師本人の記録。

著者が取り組んでいるのが、猪猟だけあって、
愛犬の負傷率が非常に高い。
犬を大切に守るように育てていて、
愛犬を危ない目に遭わせるなんて信じられないという人や、
猟に対して嫌悪感がある人には、印象が良くなさそうな内容。
人によって好き嫌いが分かれそうなハードな内容だけれど、
読者に媚びた、生ぬるいほのぼの本や、
お涙ちょうだいモノに飽き飽きした人には
読み応えのある面白い本だと思う。
これを読んで、ドイツ系エアデールが飼いたいと思う人は多いはず。

訓練競技や猟野で活躍する、
ドイツ系やアメリカ実猟系の犬達の話も、もちろん面白いのだけれど、
何よりも印象に残ったのは、著者にとって最初のエアデールである、
日本産・パスカルの章。

著者の犬に対する、夢と理想が強すぎて、
パスカルは、自分の能力を超えた、
飼い主の無茶な要求に必死に答えようと努力するけれど、
その努力は一向に飼い主から認められず、
後からきた犬達に主人の関心が移った挙げ句、
最後には主人を見限ってしまう。


この本を読んでいて、
「犬を楽しむために飼うのなら、持ち犬の能力の限界を見極めて、
 番犬など、犬の適所に合った方法を見つけてやるべき。
 最初に飼った犬は生涯手放せないと言って、愛しているつもりでも、
 犬のために苦しんでいる。
 楽しみのためなら、早く諦める人の方が賢い。」
と述べた、『対談・シェパード犬の飼い方』を思い出した。
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 沼野

Author: 沼野
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